子育てタクシーの今後
2023/11/10
今や、子育て関連のサービスを提供するタクシー会社は数知れぬほど多く、大手タクシー会社は必ずと言ってよいほど、子育て世帯向けのサービスがあります。しかし、来年20周年を迎える積み上げた実績、陣痛時の送迎は勿論、チャイルドシートを装着してのお子様1人の送迎、子育て支援NPOと強い連携をして全国ネットワークを組んでいるのは、当協会オリジナルの大きな特徴と言えます。
最近は、地方自治体から少子化対策の一環として、研修費用の全額補助(宇都宮市)等、期待値の高さを感じることも多く、企業やPTA、金融機関等と共創することで相乗りや乗合を実現しようとする実証実験(帯広市、横浜市)も相次いでいます。運行当初は、無線配車増加の差別化の武器だったつもりが、いつの間にか、広く地域に切望されるサービスになったと感じます。
悩みどころは、全国を名乗りながら、面的にニーズに応えきれず、子育て世帯から「何故、うちのエリアに子育てタクシーがないの?」というご要望が、ひっきりなしに協会事務局に届くことです。ですから、少しでも子育てタクシーにご関心のある事業者様は、協会事務局に、ご連絡を頂ければ、迅速丁寧に入会対応致しますので、どうぞ宜しくお願いします。
さて、全国子育てタクシー協会の広告コーナーではないのでした。この度、せっかく貴重な寄稿の機会を頂いたので、奥深く子育てタクシーを通じて、私が見ているタクシーの将来像、あるべき姿を述べてみたいと思います。おいおい人材難やライドシェア対策という業界の根本問題にも触れることになりますが、その辺りは、私個人の見解も含まれる、ということで、緩やかにご了解を頂きたいと思います。
まず、全国子育てタクシー協会の目指すミッション、ビジョン、バリューをご紹介しましょう。
子育てタクシーは、自治体の子育て支援部門や地域の子育て支援NPOがまずその必要性の声を上げることから始まることが多く、その意味では、街作りの一環です。今でこそタクシー業界は自治体と連携することが大事だ、との声も多く聞かれるようになりましたが、 そもそもタクシー会社は中小零細会社の集まり、それは市町村単位のプレーヤーであるからに他なりません。企業買収による寡占化も否定はしませんが、「自分達の街は自分の力で良い街にする」という熱意が重要と考えます。市区町村が少子化対策で競争するのであれば、それに大いに便乗して、タクシー会社が自分達の街の子々孫々を支えるのだ、という使命感や気概を持ちたいところです。最近ニュースにもなっている、産婦人科の減少=担い手の減少は、夜間に働く陣痛送迎のドライバーの減少と同じ構造であり、強い危機感を覚えます。
少子化問題は、未婚問題である可能性が高いので、タクシーが直接的に貢献出来る余地は小さいですが、「子育てし易い街作り」に貢献することは出来ます。また、街作りにコミットしようとする以上、営業所周辺の出生数の推移や分娩施設の増減、子育て支援拠点、待機児童の動向、多胎児の送迎、放課後デイサービスの送迎、医療的ケア児の送迎等、子育て分野の情報を踏まえる必要があります。自分達で情報収集する時間も能力もない、と悲観する必要はありません。必ず自治体の子育て部門や子育て支援団体が身近にいます。そういう現場感のある組織とタッグを組む事が重要です。これが、当協会がネットワーク作りを重要視する理由です。NPOというだけで、色眼鏡で見るタクシー会社の方も多いと聞きますが、残念なことです。彼(女)らには、強いWILLがあり、タクシー会社が見習うべき点も多いのではないでしょうか。
次に、子育ての不安感やマイカー送迎(家族タクシー)の負担に関する話をご紹介していきたいと思いますが、紙面が尽きそうなので、次回にしたいと思います。