自動運転時代のプロ運転手の価値
2026/01/12
プロの運転と何か?
子育てタクシーからみた業界の未来
今年は、(一社)全国子育てタクシー協会の創立20年ということで、発祥の地である高松にて総会を行い、基調講演として森参事官(前物流・自動車局旅客課長)に、直近の情勢について話を聞く機会を持ちました。当協会の生みの親ともいえるNPO中橋理事から、子育て支援の現場から、20年タクシーに関わっているが、国としての子育て支援の中で、「送迎」の分野はぽっかり穴が空いており、家族同士の助け合いの世界を出ていない、どこをどうしたら良いのか?という質問が飛びました。子育て家庭の送迎(ファミリーサポート事業)の現場では、送迎の謝礼相場みたいな暗黙ルールが出来ており、当事者NPOとしては法的にグレーなのかな?と悩む中で運営していることを踏まえた内容です。
その答えとして、助け合いの送迎については、許可登録を要しない運送のガイドラインを策定し、公共交通でも自家用有償運送でも対応できない様々な運送の在り方を整理したので参考にして欲しい、という助言を頂きました。ガイドラインを見ると、確かに子育て世帯の送迎について、無償の送迎を整理しつつも、自治体が関与することで利用料を低減させる可能性にも言及した上で、子育てを専門にしたタクシーの活用にも留意されたし、と明記されてあり、「流石!」と溜飲を下げていた次第です。
素人の送迎は謝礼でOK、玄人の送迎は運賃収受、という区分けについての整理が重要なのは間違いありません。しかし、素人か玄人の区分けというのは、非常に難しい問題です。私は保有免許や車両№の色の問題だとは思えません。金を稼ぐのがプロなんだ!というだけではやや雑で、現実には、需要の多寡に応じて、グラデーションのようになっているのではないかと思います。自動運転車両の開発が急速に進めば進むほど、人間による職業運転の価値について、タクシー事業者はその本質を悩まなければならない、と思います。
今は事業用に課せられた法的義務を履行していれば、職業運転ということになっていますが、その義務の有効性に疑義が生じているので、RS解禁が議論される大変に由々しき状況になっている、と私は解釈しています。
確かに何を持ってプロの運転とみなすのかは、様々な見方があり得ます。例えば、送迎で走行キロが一定基準距離以上の場合はプロと同様の義務を課す、という方法もあり得ますし、通信型ドライブレコーダーで不適切運転の検出が一定基準以下であれば、運転の安全性はプロ並み、という見方も出来ます。
いずれにせよ、「運転のプロになりたい人」を労働市場に絶やさないようにするのが、タクシー業界の生命線の筈です。その為に我々は何をどうしたら良いでしょうか?
現在のように「タクシーは稼げます!」がメインの勝負では、残念ながら「金の切れ目が縁の切れ目」。多くの業種で人手不足は共通課題ですから、他業種が賃金を上げていけば、人材確保競争に負けるリスクは常にあります。最低賃金の引上げに反対しているようでは、初めから負けを認めているようなものです。タクシー業界に限らず、低賃金の労働者層を、入社祝い金等で釣るのは、「貧しい日本」を象徴するかのようであり、個人的には、働き手の質や生産性の向上の妨げにならないか、不安を覚えます。
私は、入口戦略(採用)として「働き易さの自由度」のPR、出口戦略(雇用定着)として、「仕事の醍醐味」をいかに実現し、それを情報発信していくか、が重要だと考えます。但し、働き手にとっての自由さと、経営の効率は、必ずしも両立しません。難しい問題なので、次回以降は、「働き手にとっての働き易さ」というものを考えていきたい、と思います。